科学未来館のプラネタリウムにがっかり

ayokoyama2006-01-29

いつもすぐに予約が満席になってしまう、日本科学未来館プラネタリウムを見てきました。開門 1時間前から並びました。でも結論からいうと、6時起きして長蛇の列を作るほどのものではないと思います*1
まず第一に、ナレーションの女の子が最悪です。最近流行っているのかも知れませんが、舌足らずな下手な喋り方で、耳障りなこと比類ないです。素人のバイトでも雇っているんですか、って感じです。せっかくの谷川俊太郎の詩も台無しですよ。まだ、樹木希林の朗読のほうが良いでしょう*2
次にテーマにセンスがない。500万の星像を写せるプラネタリウムを使って、なんでわざわざ「見えない」ダークマターを取り上げなくちゃいけないんでしょう。プラネタリウムの機能としては、日周運動機能と緯度変更機能くらいしか使っていない。惑星は出てこない。薄明機能も使わない。あんな内容なら、プラネタリウムなしで 35mm 映写機だけで可能なんじゃないでしょうか。
次に、前評判の高い MEGASTAR-II ですが、そんなに大したプラネタリウムなのかな、って感じです。調整が悪いのかも知れませんが、一部の天体がピンボケしていたような気がします。他の天体は綺麗な点像が映ってますし、双眼鏡でも確認したのでたぶん間違いないと思うのですが、私は乱視の気味があるので断定はできません。
あと、プラネタリウムの星像と 35mm 映写機を重ね合わせることがあるのですが、像がずれている感じ。映写機のマーカーで星を指すときに、枠がずれているんですけど。あれで良いの? ちゃんと調整しているのかな。最後に、蛍が飛ぶように光跡がヒョロヒョロ動きますけど、あれは何ですか? せめて、流星群でも飛ばしてくれると素敵なんですけどね。
とにかく、演出、技術、全てにおいて詰まらないプラネタリウムでした。近所の川口市立科学館のプラネタリウムのほうが数等優れてます。

科学未来館全体がダメ

全体にプラネタリウムのおまけ的イメージの科学未来館ですが、プラネタリウムが酷かったので常設展示に少し期待しました。でも、こちらも大したことないです。同館の責任者、スタッフの人は、もう少し海外の博物館を見て勉強したほうが良いでしょう。全体的に展示内容が自己満足で、企画力も稚拙、大学の学園祭程度の内容と考えておけば後悔もないでしょう。エンターテイメント性、専門性のどちらを見ても中途半端です。
たとえばスーパーカミオカンデの展示ですが、ミニチュア模型を展示するのは、まあ当たり前ですよね。あと、本物サイズの光電子増倍管(模型?)の展示も、まあ思いつくところでしょう。それ以外では、専門的知識を吸収したい人には web で得られる以上の情報は見当たらないし、ニュートリノとは何かという説明なしには、一般市民には巨費を投じたスーパーカミオカンデの高度な科学技術や、使用された光電子倍増管の性能がいかに優れているか、という内容は伝わないのではないかと思いました。
また、コンピュータ技術の内容を説明する展示についても、いきなり LISP のコードを表示してみせたところで、なんの意味があるんでしょう。それこそ自己満足以外の何者でもないでしょう。さらに、インターネットメールの原理を物理モデルで説明するというのは、アイデアは悪くないと思うのですが、考案者の意気込みだけが先走りした感じで、「ああ、電子メールって、インターネット上をそういうふうな仕組みで伝わるのね」ってイメージで理解してもらえるとは到底思えません。かえって、変なボールの転がる動きの印象が強すぎて、誤ったイメージだけが子供の頭に残りそうで心配です。
私もそれほど多くの博物館を見てきたわけではありませんが、ボストンの科学博物館にしても、ワシントン D.C.スミソニアン博物館にしても、もっともっと工夫が見られますし、大学で一応は理工学を学んだ大人が見学しても、新しい発見を随所に見つけられて本当に楽しいです。たとえば、ボストンの科学博物館のそれには、「正規分布」を物理的なモデルで説明する模型があります。上から転がってくるボールがパチンコのように散らばりながら、模型の下部に正規分布曲線のように溜まっていくのです。科学的な正確さは分かりませんが、あの、目からうろこが落ちるような模型を一度見たら、正規分布にもっともっと親しみがもてるはずです。正規分布の模型だって、子供が見ても十分楽しめますが、ボストンの科学博物館内には子供向けの優れた展示がもっと数多くあります。日本では、上野の科学博物館が優れていると思いますが、それでもまだ敵わないような気がしました。

スタッフの人は好感が持てます

いろいろ悪口を書いてしまいましたが、スタッフの方には好感が持てました。すばる望遠鏡を説明してくれた男性も、DNA 模型を説明してくれた女性も、みんな科学が大好きで…、という感じで真剣に説明してくれました。ありがとうございました。

ドリンクコーナー

科学未来館の中には、5階にドリンクコーナーがあり、カプチーノや軽食が食べられるようになっています。しかし、あれ、テーブル少なすぎです。大きなテーブルや小さなテーブルを並べたアートのような遊び心は結構ですが、それも自己満足じゃないでしょうか。多くのお客がテーブルからあぶれて、廊下に並べられたソファーに陣取って狭苦しそうにコーヒー飲んでました。あれは、なんとかして欲しいです。

*1:写真は、9:36 現在(開場 24分前)の行列です。

*2:それは、NHK の番組ですが。