80386 の思い出(その 4)

胃の調子が変なので、気を紛らわすために思い出話など。
前回までで、80386 でメモリを多く積めるようになったところまで話しました。私も大枚はたいて、たしかバッファロー(メルコ)の 3MB メモリを買いました。いま考えると中途半端な容量ですが、たしか 3MB だったと記憶してます。
当時、仮想 86 モードを使って、プロテクトメモリ(拡張メモリ)をディスクキャッシュとして使えるフリーソフトが出てきたのです。名前は忘れてしまいましたが優れたソフトで、確か、ディスクキャッシュとして使ったり、RAM ディスクとして使ったりできました。それまでは RAM ディスクが主流でしたが、電源オンオフ時に待避したりしなくてはいけなくて、使い勝手が悪かったのです。パソコンでディスクキャッシュが使えるようになってきたのは、この頃からだったように思います。キャッシュの効果は絶大で、一度起動したソフトが一瞬で起動するので、感激しました。(今でいうと、SSD くらいの感激かも)
その頃(順序は不確かですが)、DOS エクステンダという技術も出てきました。これは、16ビットリニアモードでしか動かない DOS 上にインストールすることで、DOS 上から 32ビットプロテクトモードを有効にしたソフトを動作させることができるという、ある意味ハイブリッドな技術でした。いろいろな DOS エクステンダの実装があったように思いますが、私に一番記憶が深いのは DJGPP (go32) という実装です。パソコン上で本物の GCCEMACS が動くようになり、非常に感激したのを覚えています*1
私が現実的に一番恩恵を受けたのは、TeX だったと思います。TeX とはマークアップ形式の組版ソフトで、GUIワープロなどとは異なり、HTML のような命令をテキスト中に埋め込むことで、本格的な出版レベルの印刷物を作成する、特に学術論文のような数式をたくさん利用する人に好まれていたソフトウェアです。大学の先生や学生が論文、卒論を書くのによく使われていました。
閑話休題。それまでは MicroTeX というのがあって、バイト先などの 8086 や 80286 の PC で TeX が動いていたのですが、これは有償ソフトウェアで、誰もが利用できるものではありませんでした。しかし、DJGPP が PC 上で動いた頃から、なんと本物の TeX (pTeX など) が個人で利用できるようになったのです。このときの感激は、なかなかうまく人に伝えられません。METAFONT ももちろん動いたので、自分の好みの解像度のフォントを生成したりできるようになりました。
なんだか往事を知る人しか分からないような話になってきたので、今日はここまで。

*1:GCC は 32ビットレジスタが前提だったので、それまでは大学の研究室にあるような Sun などのワークステーションでないと動かすのが困難だった。X68000 用などはあったと思いますが。