実験室の精神論

どこの企業(電機メーカー)でも同じかも知れませんが、実験室(ラボ)の作業机では「利用中」札を貼っておき、人がいないのに「利用中」になっている人を探してメールで注意する、といったことが行われています。これを見ていると、なんだか見回りをして忘れんぼの犯人を探すゲームのようになってきていて、目的と手段を混同しているように思われてなりません。職場の同僚にこの話をしましたが、あまり理解して貰えませんでした。月曜日の午前中など、犯人探しのメールが大量にやってきて、これではまるで戦前の「方言札」です*1
実験室の「利用中」札の目的は、

  • 連続通電に対して安全性の保証されていない試験機器に、電源を投入したまま放置しないようにする。
  • 有限な資源である作業机を長時間占有しないようにする。

ということかと思いますが、火災予防などを考えると、前者が特に重要なのではないでしょうか。
もしそうだとすると、利用中の札を付けたままにしている人を探し出して、物忘れを糾弾するのは目的ではなく、それは手段だということです。もっと合理的な方法はないのでしょうか。例えば作業机には電源連動のタイマーを付けておいて、1時間に一回、ウォッチドッグ式に延長ボタンを押さないと電源が切れて、また、利用権が自動的に失われるようにする、というのが良いかも知れません*2。連続試験が必要な場合は、権限のある人に所要時間を申請して、タイマーを設定してもらう、とか。
あと、半田ごての電源もそうですよね。半田ごての付け放し(火事の大きな原因になります)を防止するため、専用コンセントを用意する会社が多いと思うのですが、これなども、こて台に乗せないまま連続して 3分経過したら電源が切れてしまうようにする、とかいろいろ方法はありそうです。
ま、大抵の企業では「そんなことしたら、若いモンのシツケにならん!」ということになるでしょうから、きっと不採用でしょうなあ。火災や事故の防止は精神論だけではダメだと思うんですけどね。日本人って精神論好きですからね。

*1:方言札の悲哀については、小説ではあるが「井上ひさし」の「吉里吉里人」などが参考になる。

*2:こういう話をすると、「トイレに行っている間に電源が切れたらどうしてくれるのか」など、枝葉の批判ばかり出てくる。