メリケンの会社と付き合う秘術

大げさなタイトルですが、気にしません。
私は日本企業(電機メーカー)に 8年勤め、米国系メーカーでも 7年ほど仕事してきました。かなり頭がメリケンになってきたのは認めますが、やっぱり日本人なので、日本企業のお客様と良好な関係を維持することに注意を払っていたりします。
あまり難しいことは書けませんが、極端に単純化すれば、「米国企業はスループットを重視する。日本企業はレイテンシを重視する」と言えるのではないかと思えます。
日本人が一番理解できないのは、ある技術的質問をしたときに、それを米国人の設計担当者が一目見れば即答できそうなのに、何日経っても回答が来ない、という典型的な例ではないでしょうか。米国人はプロセスを重視するので、問い合わせはまず、日本のフィールド技術者が問題を把握し、整理し、それを米国のアプリケーション技術者が理解し、既に同様の問い合わせがないか調査し、それが初の案件であると同時にマニュアルに記述がないことが分かって、初めて設計者の時間に割込みます*1。質問の一つ一つに対して、設計者が巻き込まれることは稀です。なぜなら、設計者は設計に時間を割くことがもっともスループットを向上させると考えられているからです。これは、「お客様は神様です」的な日本人的価値観からは、到底理解できないことでしょう。
逆に、米国人が一番理解できないのは、昨日寄せられた質問に対して今日回答できないというだけで、部長や事業部長クラスにエスカーレーションされてくる事実です。「俺たちは寝る暇も惜しんで、一週間あたり 5件の問題を解決してやっている。それなのに、昨日思いついた疑問に今日回答できないだけで、どうして督促を受けなくてはいけないのか?」 米国人には、昨日発生した問題を今日解決できないためにプロジェクトの進捗が遅れるのは、責任者が、優先度に従って、かつリスクを見極めながらプロジェクトを管理できていない典型的な問題だと考えます。
ま、はっきり言って、私にはどちらが正しいのか断言するほどの見識はありませんが、要するに「違うんだ」ということを知るだけで、異文化の人間との付き合いは、多少スムーズになるのではないでしょうか。

*1:丸投げしようものなら、処理能力も管理能力もナシということで、クビになります。ちなみにこれが最近のトレンドだと思う人は、北杜夫を読みましょう。1960年代すでに、外国の医師が階層的な仕事のやり方をしていることが書かれています。また氏自身も、ただの風邪ひきが大学病院を訪れる愚かさを書いています。本当に重大な病人だけ、特別の専門医の診察を受けるべきなのです。脱線終わり。