スイッチングレギュレターの L は何に利くか

MC34063A 等のレギュレター IC (DC-DC コンバータ)のデータシートを見ると、必要な回路定数を決めるための数式が並んでいます。しかし入門書ではないので、たとえばインダクタに求められる最小値の計算式はあっても、それが回路特性上、どのように利いてくるかについては触れられていません。
今日は、CQ 出版社から出ている長谷川氏の書籍を参考にしたり、LTspice を駆使したりして、この意味合いを勉強していました。
結論から言うと、インダクタの値が小さいと、回路を流れる電流の変動(リップル)が大きくなるようです。スイッチ回路でインダクタにかかる電圧を on/off させる際、インダクタンス L に反比例したレートで電流が増減しますが、この L が小さいと、電流の増減が大きくなります。負荷に現れる電圧変動を抑えるためには、負荷に並列に繋いだ低インピーダンス(交流に対して低インピーダンスとなるようにキャパシタを使う)回路でリップルを吸収しますが、リップル電流が大きいと、より小さなインピーダンスで吸収する必要が生じます。
また、先日悩んだ「許容アンペア・ターン」ですが、最大起磁力の小さい磁性体でインダクタを作ると、大電流を流した際の透磁率が下がるので、結果としてインダクタンスが下がります。つまり、これを電源回路に用いるとリップル電流が増加し、結果として電源のリップルが増加すると共に、キャパシタへの負担が増えるので、電源回路の寿命や信頼性を下げることに繋がります。
という理解で良いですかね?

補足 (3月8日)

長谷川氏の説明にもありますが、出力平均電流が下がると、インダクタを流れる電流が尻餅(?)するようになり、結果として出力電圧が上がってきます。通常は電圧フィードバックをかけて (t_on + t_off) / t_off * V_in (boost 型コンバータの場合)よりも出力電圧を下げることになりますが、インダクタの L が小さいと、この「尻餅」が起きやすくなります。同氏の本では、インダクタに流れる電流の p-p 値を、出力電流平均値の 1/2 以下になるように設計せよ、とあります。