「デジカメ写真は撮ったまま使うな!」

本当は別の本を探しに紀伊国屋に行ったのですが、つい目に付いて面白そうなので買ってしまいました。

基本的なコンパクトデジカメの使い方については勉強になりました。名刺を写真に撮るのは私も実践していましたが、前後に撮影した写真と比較することで「この人」が「誰なのか」ということを想起できる、というのは気づいていませんでした。確かに、今回出張で訪問した際に会った方の顔かたちも、名刺だけからは連想できませんが、前後の京橋駅などの写真を見れば思いつくというものです。その他に、画角の切り取り方とか、基本的な技法については大いに参考になりました。あと、一般の人がフラッシュを多用しすぎるというのは同感です。
一つ疑問を呈するとすれば、著者の方がレンズの F 値(口径比)に異常なまでな執着をお持ちだということです。私もニコンの 50mm F1.4 などというレンズを購入したりして、明るいレンズが重要なことは分かりますが、しかし同時に、焦点距離が短くて明るいレンズというのは、技術的に非常に難しいのではないか、と思うわけです。これは、一眼レフ用の高価な(数十万円の)広角ズームレンズ製品を見ても、F2.8 止まりなことから想像できます。レンズの径が 70mm もあるプロ用レンズでこれなのですから、コンパクトデジカメのレンズについては推して知るべしです。(F 値は口径比という言葉から分かるように、理論上、口径が 2倍になると F 値は 1/2 になります。)
結局のところ、レンズを歪み、収差の少ない状態で使おうとすれば F2〜3程度には絞らざるを得なくなる訳で、コンパクトデジカメでそこまで F 値にこだわっても仕方ないのではないかな、と。もちろん、暗くてダメダメなレンズはあるかも知れませんが。著者は 158ページでデジカメ購入時のアドバイスを述べていますが、私ならば以下

  • レンズの焦点距離の広角側 (広角側に伸びているほうが楽しい)
  • 撮像素子が大きいこと*1
  • シャッターのレリーズラグが短いこと

は残し、以下を追加したいところです。

  • 電源投入から撮影可能なまでの遅延が少ないこと (シャッターチャンスを逃さないように)
  • 内蔵時計の精度が高いこと

後者に関しては、Flickr などの写真ブログに投稿したり、GPS 時刻と同期するような用途では重要です。今は注目されていませんが、将来はもっと重要視されることでしょう。(なんちて)
あ、そうそう。今のコンパクトデジカメの画素数が必要以上に多すぎる、というのは同感です。今はメディアが安いので、1枚あたり数メガバイトの画像も平気で保存できますが、本当に 1000万画素などというコンパクトデジカメが必要かと言われると疑問です。私の使い方では、あとでトリミングすることを考えても 400万画素くらいで十分な気がします。どちらかというと、レンズ性能や JPEG の伸張後画質のほうが重要だと思います。

後記

風呂に入りながら考えていたのですが、一眼レフ用の高額な広角レンズも、コンパクトデジカメ用のレンズも、画角だけから考えると、単純に幾何比例の関係にあるのではないかと思うようになりました。つまり、同じ画角を得るレンズであり、かつ、レンズの屈折率や曲率が同じであれば同じ口径比のレンズが作れるのではないか、と。もちろん、実際には光の波長は幾何比例しないので、小さなレンズだと精度は得られなくなりますが。一眼レフ用の広角レンズのレンズ径がむやみに大きいのは、口径比を小さくするためというよりは、35mm の大きなフィルムや撮像素子全体に光を届けなくてはいけないためなのかも知れません。そうなると、大口径レンズとコンパクトデジカメのレンズの間で、条件は変わりませんね。
撮像素子の大小で幾何比例が成り立たない部分としては、一つは被写体との関係(撮像素子が小さいからといって、小さな被写体を近くで撮れば良いという訳にはいかない)と、極端に素子を小さくすると単一画素に蓄えられる(得られる)電子の数が少なくなってしまうことでしょうか。もう一つは、先ほどの、光の波長との関係でしょうか。

*1:一般の人が小さくて安価なカメラを所望する以上、あまり大きな素子は使えないでしょうけれど。