電気回路の教科書買った

職場で、ときどき電気回路の計算をしているのですが、しばしば分からないことがでてくるので教科書を探すことにしました。分からないことというのは、具体的には

  • クオリティ・ファクタ (Q)の計算、およびその定義からの導出
  • 過渡解析 (と、ラプラス変換

などです。今日などは、TINA (SPICE) で遊んでいたら「上司の上司」(以下「ボス」)に見つかって、宿題を貰ってしまいました。そのボスは結構技術に厳しい人で、「回路理論を分からないでシミュレーションしていると、シミュレータに飲まれちゃうよ」とか言われ、ちょっと悔しかったのでした。
宿題というのは、ある内部抵抗を持つ直流電源をコンデンサに繋いだとき、コンデンサに現れる電圧は、その時定数 RC に伴って立ち上がりが鈍るはずだが、もし、コンデンサに並列に高抵抗を置いた場合、その立ち上がりにどのような影響が出るか考察せよ、というものでした*1。回路理論的な証明に加えて、その過渡解析を TINA で出力してね、というのが、もう一つの宿題でした。
さて。ボスが解いた証明を見ると、過渡解析なので積分方程式とか出てくるのですが、もうほとんど忘れかけていることが悔しくなりました。おまけに、ラプラス変換を使えば容易に解けるはずなのですが、これも忘れました。あとでボスに訊いたら、「俺も、教科書見ながら解いたんだよ」とか言ってましたが、「ラプラス変換で解けますかね?」と言ったら、いきなりラプラス変換の式を書き始めたので、実は知識を謙遜しているだけなのだと分かりました。(負けたー。さすがは、アナログ技術者。)
さて、閑話休題。教科書ですが、紀伊国屋書店マグロウヒルの「電気回路」という本を選びました。理由は、クオリティ・ファクタについて、その物理的意味合いから出発して説明している書籍が、これしか見つからなかったからです。有名な大下眞二郎先生の本についていうと、例のオレンジの上下巻の本は、大学時代の教科書だったはずで、実家の本棚に埋まっている可能性があるので、今回はチェックしませんでした*2。(というか、上下巻を新たに購入すると、出費が痛い。)

電気回路 (マグロウヒル大学演習)

電気回路 (マグロウヒル大学演習)

ところで、紀伊国屋書店

紀伊国屋書店(新宿本店)は、書籍の並び方などで気に入っている書店なのですが、一つだけ、嫌いなところがあります。それは、店員同士の会話が、客を無視した横柄な態度だという点です。職場ですから、上司と部下の会話というのはあると思うのですが、そばで顧客が耳にしている以上、丁寧な会話をすべきだと思うのです。例えば、

上司: ○○さん、この書籍を確認して、お客様にお渡ししてください。

とかいうべきところを、ここでは

上司: ○○くん、これ探して、お客さんに渡してくれる?

みたいな感じなのです。顧客には丁重な応対をしているだけに、そのギャップが非常に耳障りです。特に、4階にいる某店員は、部下が説明している内容に、数分間ずっと、「うん。ふーん。うんうん。うーん。うん、うん。ふーん。(以下、略)」という横柄な対応をしていて、思わず殴りつけたくなりましたよ! 同店は歴史ある書店だとは思うのですが、どうも近年は、ぬるま湯的な職場の空気が、お客にまで伝わってくるようになってしまい、実に残念です。個々の店員さんは、顧客に丁寧な対応をしているだけに、その変わりようが実に不愉快です。

ところで、先ほどの回路の解説

結論からいうと、コンデンサに並列に繋がった抵抗 R が、電源に直列の抵抗 r に比べて十分に大きければ、時定数の変化は微小なので、過渡状態における電圧の立ち上がりにはほとんど影響がない。あるとしても、それは立ち上がりを早くする方向に動くのであって、立ち上がりを鈍らすことはない、となります。
電源のインピーダンスは 0 とみなせるので、電源に直列の抵抗 r と、コンデンサに並列に繋がった抵抗 R は、コンデンサと組み合わせたときの時定数 r*C を、(R//r)*C に変えます。R//r < r なので、時定数が小さくなることはあっても、大きくなることはありません。また、R >> r ならば、R//r と r は、それほど大きな違いを持ちません。
なお、コンデンサが十分に充電されたときの両端電圧は、C に電流が流れなくなっているので、R * E / (R + r) (E は電源電圧)となります。R >> r ならば、これはほぼ E と同じです。

日本人が書いた教科書と、海外由来の教科書

これは単純な比較はできなくて、あまりステレオタイプな批評はできないのですが、一つ言えることは、日本の教科書は全般的に無味乾燥な内容が多いことが挙げられると思います。逆に、海外の教科書でときどき感心するのは、ある章で説明する内容が、どのような歴史的経緯で生まれた概念で、どのような技術背景を元にしているのか、などをきちんと説明しているものがあることです*3。個人的経験からいうと、日本の教科書には、そのような説明があるものは少ないように思えます。

*1:実は、そのボスが取引先の技術者に反論されたため、それを理論的に否定するために自宅で過渡解析していたというものですが、直感的には明解な説明が可能です。ボスは、数式で証明したかったようです。

*2:実は、在庫のなかった下巻に載っていると思い込んでいて、チェックを忘れた。

*3:ときどき、この先生の専門は何なのだろうと訝るくらい、造詣の広い先生がいたりします。例えば、Donald E. Knuth 先生とか。