簡単な電源回路でも、実は分かっていなかった

学校でキルヒホックの法則から交流回路からフェーザーまで習って、電源回路なんて分かったような気がしても、私は実は、あまりよく分かっていません。
今朝、某社のアプリケーションレポート SLAA409A を見てました。最近はやりの電力計(ワット・メーターあるいは E メーター)の実装例を示すアプリケーションノートです。最初は、電源ラインから電圧と電流変化を読み取る部分(電流の位相が分からないと、有効電力が分からないので、位相差が重要なのだ)を感心して眺めていたのですが、その後、電源回路のほうに目が行きました。アプリケーション上、電源のアイソレーションがあまり重要でないので、AC ラインからトランスを使わずに直接マイコンの電源を得ているのです。ここで、定電圧回路に電圧を引き込む際に、分圧比を使って電圧を下げるために、あるいは後で繋ぐツェナーダイオードの電流を制限するため(?)に、シリーズに R と C を入れているのを見つけました*1。学校で教わったように C は交流に対してインピーダンスとして働くので、これは理にかなっているのですが、どうして R だけではダメなのでしょうか。C が要るのでしょうか? 恥ずかしながら、私には理由が分かりませんでした。
アプリケーションレポートを読んでいくと、SLAA024 という別のアプリケーションノートを見ろ、とあります。電源回路のノウハウが詰まっているのかと思って開いてみると、なんとマイコンのアプリノートでした。関係ないじゃんと思って読み飛ばそうとしたのですが、実に有用な電源回路の例が多く並んでいるのを発見しました。おお、こいつは勉強になるぜ!
それによると、交流回路において RC 分圧が有用なのは、C は無効電力しか発生しないので、エネルギーロスが少なくなる、ということのようです。目から鱗です。原理的には、たとえば 100オームの純抵抗成分のヒーターがあるとして、こいつに実効値 100V の交流電源を繋ぐと 100W の有効電力が熱に変わります。こいつに 100オームのインピーダンスとなる理想的なキャパシタを直列に繋ぐと、力率は 70% となって、有効電力は 50W に落ちます。キャパシタでは無効電力 50 var が発生しますが、消費されません。おお。分かっていたつもりだけど、実は分かっていなかった私。
同じことを直列抵抗でやろうとして 40オームを直列にすると、電流が 0.7倍になるのでヒーターの消費電力は 50W に落ちますが、同時に直列抵抗でも 20W が消費されてしまうわけです。
さて。ここまでは分かりました。本当に分からなかったのは、この後段に繋ぐ整流回路です。交流電源に RC を直列に繋ぎ、知ったかぶりをして後段に半波整流回路を繋いでみます。するとどうでしょう?
bad_rectifier
これだと、C5 には整流した電圧は現れません。うーん、以前なんかの試験で見たような回路だなあ、と気づいたのはずっと後で、しばらく LTspice と格闘していました。これで整流できないのは、キャパシタ C4 が 141V で充電されてしまい、D4 のアノードにはオフセット -141V、振幅 141V の正弦波電圧がかかってしまうからでした。これを半波整流できるようにするには、キャパシタ C4 に並列にダイオード(アノードが左側)を繋げば良いのでしょうか? (尻切れトンボ)
なお、以下の図のような回路にすると、交流電源の振幅の 2倍(peak to peak)の電源が得られます。これは、どこかで見たことがあるような気がします。
rectfier_but_double
閑話休題。上記のアプリケーションノートを見ると、ツェナーダイオードを使った例が出てます。参考になりました。おしまい。

元ネタ

ちなみに、私を電力計な気分にさせたのは、これだ!

*1:そういえば、昔ハンダごての電力調整回路で、キャパシタを使っているのを見たことがあります。