家庭用蓄電池が 80万? そりゃ高いだろ!

夏の電力不足を補うための、家庭用蓄電池が、ニュースで報じられるようになってきました。ヤマダ電機の場合、1kW 時の蓄電池で 80万円、2.5kW 時で 180万円だそうです。富裕層がターゲットなんでしょうか?

単純な比較はできませんが、APC無停電電源装置UPS) SURTA1500XLJ と拡張バッテリー SURTA48XLBPJ を組み合わせると、1.3kW 時の電力量を蓄えられます。やや高騰してますが、今でも 16万円あれば調達できます*1。もちろん、どんな蓄電池でも変換効率は 100% でないのでロスはありますが、うちの 400リットルの冷蔵庫*2は定格 140ワットですが、これを 5時間運転できる能力があります。
ちなみに、こちらのニュース記事ですが、記事に技術的な混乱が見られます。

人の間違いをあげつらうつもりはないですし、流行のベクレルとかシーベルトなんて単位を覚えるのも良いですが、今年はキロワット(kW)、キロワット時(kW 時)という単位をしっかり覚えておくと、少し訳に立つことでしょう。
「1時間あたり 1キロワット」というのは、物理量的、電気工学的に意味が分かりません。たぶん、「1キロワット時」というニュースリリースを、新聞記者の方が取り違えてしまったのだと思います*3。以前の日記にも書きましたが、1キロワット時というのは、1キロワット(1000ワット)の電気機器を 1時間使用したときに消費する電力量です。簡単に理解するには、1キロワットの電子レンジを 1時間使うと、東京電力から 20円請求される、と考えると分かりやすいです。
100ワットの電球を 10時間使うと、100 × 10 で 1キロワット時です。20ワットの蛍光灯を 50時間使うと、20 × 50 で、やはり 1キロワット時です。電力と時間を「掛け算」すると、電力量になります。電力を時間で割ってはいけません。

電気代に換算すると悲しくなる

ちなみに、上に書いたように、東京電力では現在 1キロワット時を 20円ちょっとで売っています。実際には基本料金もあるので話は簡単ではありませんが、まあ、そんなところです。
今回、発表されている蓄電池は、安価なものでも 1キロワット時で 40〜50万円だそうです。つまり、東京電力が普段 20円で売っている電力量を一回分蓄えるために、40万円の装置が必要になるということです。蓄電池にも寿命がありますが、仮に 500回充電できたとして、1回あたり 800円のコストです。東京電力が売っている価格に比べて 40倍です。なんて高価なことでしょうか。
今まで、われわれが湯水のように使っていた電力を電池に蓄えて利用しようとすると、どれだけ高価につくかを実感できます。節電の重要さを思い知らされます。

*1:ただし、確認していませんが、3時間で 1.3kW 時のフル充電は無理かも知れない。

*2:7〜8年前の製品。

*3:高校で物理を履修して、ディメンションを学んだ人ならば、前者は 1kW/h、後者は 1kW・h と言えば、より明確になるでしょう。