月を撮影する計算

さて。昨日は 510mm の焦点距離で月を撮影したわけですが、Nikon D7000 では、月を撮像素子いっぱいに写すには、どのくらいの焦点距離があれば良いのでしょうか。計算してみます。
D7000 の撮像素子は 23.6 x 15.6mm です。焦点距離 f と画角θ、撮像素子上の像の長さ d の関係
\theta=2\tan^{-1}{d\over2f}
から、d = 15.6mm、月の最大視直径を 33'32" とすれば*1、f = 1600mm となります。言い換えると、焦点距離が 1600ミリのとき、撮像素子の短辺いっぱいに月が写るということになります。
実際には、月が天空上を動いていくので、赤道儀がないと 1200ミリ程度が限界でしょうか? うちの Vixen ED81S 鏡筒(f = 625mm)に 1.7倍のテレコンを付けても(装着できれば、ですが)、十分に撮影可能なことが分かります。

分解能はどうか?

ちなみに、望遠鏡というのはいくらでも拡大できる訳ではなく、ある一定以上に拡大すると、光の回折によりぼやけてしまう限界が存在します。一般にドーズの限界という式が使われ、116秒角/口径(ミリ)で計算するようです。つまり、ED81S 鏡筒の分解能は 1.43秒ということになります。
もし、1.43秒離れた 2つの点光源から入射した光があるとき、撮像素子上にはどれくらいの間隔で写るのでしょうか。また、それは何ピクセルに相当するのでしょうか。その値が 1ピクセルより小さいとすると、撮像素子で分離できない(カメラの性能がレンズに劣る)ことになります。逆に、1ピクセルより大きい場合は、レンズの性能がカメラに劣る、つまり、それ以上拡大してもカメラの性能を生かせないということになる訳です。(素人計算なので、間違っていたら御指摘願います。)
さて、1.43秒角を D7000 撮像素子の 1ピクセルに投影するには、どのくらいの焦点距離のレンズが必要でしょうか。D7000 の撮像素子は 15.6mm に 3264ピクセルが並んでいるようですので、1ピクセルの大きさは 4.78um となります。先ほどの関係式を適用すると、1.43秒角を 1ピクセルに結像させる焦点距離は 690ミリになります。なんと!
ということで、焦点距離 625ミリの ED81S 鏡筒に 1.7倍のテレコンを付けると、1.43秒角は 1.5ピクセル程度になり、D7000 の撮像素子を生かしきれないことになります。
さらにいうと、テレコンバータを付けるとレンズの性能は低いほうに引っ張られるので(理論限界を超えるテレコンバータは無いので)、ED81S 鏡筒にテレコンを付けないで撮影したほうが、綺麗な像が得られる可能性もあります。
計算、おしまい。

*1:こちらを参考にしました。http://eclipse.star.gs/dic/umbra.htm