統計の教科書
昨日、エラそうなことを書いたので、何か良い参考書がないかと思って統計学の本を探しています。最初、2年間で 3刷も重ねている平易そうな本があったので、買ってみました。でも、これは大はずれでした。
図解入門よくわかる統計解析の基本と仕組み 改訂版 (How‐nual Visual Guide Book)
- 作者: 山口和範
- 出版社/メーカー: 秀和システム
- 発売日: 2004/12/21
- メディア: 単行本
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出だしは丁寧で、細かい定義から始まるのですが、3章の「理論分布」あたりから急速に駆け足になってきます。また、理論の背景や、他の理論との関係を丁寧に述べる代わりに、定義や数式が増えてきます。著者はおそらく網羅的に、要求されたキーワードを可能な限り盛り込もうとしたのではないでしょうか? ページ数は 200以上もあるのですが、なんだか消化不良で満足感が得られませんでした。
今日は、再度書店を訪れ、いかにも「教科書っぽい」参考書を探してみました。私の悪い癖で、最初に買った本を読むことで、どういう本が実際には優れているのか、という見当がようやく働くようになるのです。今日買った本はこれです。
- 作者: ポール G.ホーエル,浅井晃,村上正康
- 出版社/メーカー: 培風館
- 発売日: 1981/01/01
- メディア: 単行本
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次に正規分布の説明を見ると、「正規分布はその曲線を表わす式によって定義されるが、以下の章ではとくにこの式を使うこともないので、ここではそれを書かない」*1と来たではないですか! 日本で、ここまで大胆に言いきる教科書って少ないですね。物事の大切なところを重視し、本質でないところをバッサリ切りさる方針に、ますます共感しました。大抵、正規分布の数式を見たところで、学生が Gnuplot やポケコン*2で曲線を表示させるくらいしか用途はないのです。ま、優秀な学生はそれを不定積分してみようとするのでしょうが、フツーの学生は式を見て、即座に断念します。
さらにこの教科書を気に入ったのは、ホーエル先生の人柄が文章や例題のユーモアに表れていて楽しいからです。日本の先生の執筆する教科書って、大抵無味乾燥で、例題もつまらないものです。TeX のクヌース先生に限らず、欧米には自分の専門外にも造詣の深い先生を良く見掛けます。
最終的に、この本を買うことに決めた理由ですが、各章の先頭部分を軽く触っていくだけで、教科書の構成が俯瞰できることです。思い付いた順に筆を走らせたのではなく、理論を緻密に順序立てて構成していることが良く分かります。
なお、価格は 1,650円(税抜)と安価なことに驚いたことを付記しておきます。