IF アンプ部の調整

S/N Characteristics for L34 (Elecraft K2)
無線機キット K2 ネタです。
昨日、基準周波数の校正が終わったので、今日はその他の校正を一からやり直すことにしました。いちばん面倒だったのは、IF アンプ部にある L34 と呼ばれる可変インダクタの調整です。このインダクタのコアを回しながら、最も信号強度が高く、かつノイズが少ない部分を探せというのですが、きわめてブロードな(鈍い?)反応なので、どこがピークなのか聴覚上分かりにくいのです。
そこで、Audacity 1.3.6 という音声信号処理ツールに備わっているフィルタ機能と、自作の信号強度計算プログラム*1で、数値的にピークを追い込むことにしました。K2 のマニュアルを元に、7000kHz ほどで拾える内部信号を、サイドトーン 600Hz を使って zero-in します。そして、ヘッドホン端子から PC のオーディオ入力に取り込んで、インダクタのコアを 90度単位で回しながら信号を録音していきました*2。この際、時間変化と測定のばらつきを抑えるため、一度コアを時計回りに回して測定したのち、今度は逆回しで測定し、2パターンのデータを取りました。(2パターンのデータは、後で平均化します。)
次に、この信号にデジタルフィルタを適用していきます。一つのフィルタは、Audacity の Effect → Filter → Equalization で、次のようなカーブを適用しました。(数値に深い意味はないのですが、とりあえず。)

<curve name="bandpass_600">
	<point f="424.260000000000" d="-30.000000000000"/>
	<point f="504.540000000000" d="0.000000000000"/>
	<point f="713.520000000000" d="0.000000000000"/>
	<point f="848.530000000000" d="-30.000000000000"/>
</curve>

ちなみに、フィルタ特性は以下のフォルダに XML 形式で記録されるようです。

C:\Documents and Settings\ユーザー名\Application Data\Audacity\EQCurves.xml

続いて、ノイズ部分を高域フィルタで取り出しました。これも特性はあまり真面目に考えていないのですが、Effect → Filter → High Pass Filter で、次のようなフィルタを適用しました。

Rolloff: 24dB
Filter Q: 0.7
Cutoff freq: 1200Hz

これらファイルを WAV 形式で保存したのち、ここからは私の好きな UNIX (NetBSD) 環境で作業します。まず、SOX というツールで raw ファイルに変換します。以下の通りです。

netbsd$ sox 000_1.wav 000_1.raw

これを、自作の信号強度計算プログラムに通して、gnuplot でまとめたものが、右上のグラフです*3
グラフで、赤い線が 600Hz トーンの強度に相当します。緑の線が、ノイズレベルにほぼ対応するとお考えください。フィルタを通しているため、絶対レベルを議論しても意味がないので、インダクタのコアを基準点(後述)から 470度時計方向に回した位置を、いずれも 0dB に置いてます。
グラフの横軸は、コアを金属ケース中でもっとも引き出した位置からの回転角度です。結局私は、コアの位置を 440度ほど回した位置を最良点と決めました。興味深いのは、信号強度最大点には明瞭なピークが見られるのですが、ノイズレベルは、そうならなかったことです。もっとも、ノイズを計算するためのフィルタで、600Hz のトーンを完全に除去できていないので、それが原因ではないかと思っていますが。
いずれにしても、コアを 1周ほど回しても信号レベルが 1dB ほどしか変わらないことが、この L34 の調整を難しくしている要因かと思います。
おしまい。

*1:というほどの大袈裟ものではないが。

*2:各ファイルは 10秒程度ずつ。

*3:gnuplot の説明は、http://t16web.lanl.gov/Kawano/gnuplot/ が分かりやすいです。