ヘンテナの NEC モデリング

早速、NEC (numerical electromagnetic code) のフリーソフト 4nec2 で、ヘンテナのシミュレーションをしてみました。巷では論争があって、4エレ八木くらいのパフォーマンスがあるという意見と、いやいや数値解析上は、せいぜい 5dBi くらいだよ、とか、話題に事欠きません*1。どちらも信憑性のある意見に見えるので、おそらくどちらかが極端に間違っているのではないのだと想像しています。
モーメント法を用いる NECモデリングできるアンテナであれば、シミュレーション結果はおおむね正しいと思うので、もし実体験がシミュレーションに合わないとすれば、モデリングできない(していない)部分に差異があるのでしょう。ある方の意見では、ヘンテナは多エレメント八木に比べて周辺の導体、地表、構造物などから影響を受けにくく、現実的な環境でもシミュレーションに近い実用が可能なのではないかという予想があり、興味深いです。
最近は SPICE にしろ NEC にしろ*2、誰もが使えるパソコンで高速シミュレーション可能なので、世の中はシミュレーションの大流行りです。SPICE でもそうですが、結局、精確にモデリングできないものは精確にシミュレーションできませんし、シミュレーションそのものが、現実世界のある側面だけを模倣しようとするものなので、注意が必要です*3。私の業務に近い CPU シミュレータに関して言えば、例えば命令セットの厳密なシミュレーションが可能なものでも、メモリアーキテクチャに依存するアクセスペナルティに関しては、正確な模倣ができないことが多いです。つまり、シミュレータだけで実行性能の見積をするのは危険です。繰り返しになりますが、シミュレータを使うときは、それが現実をどのようなモデリングで近似していて、何を目標としていて、何については妥協しているのかを知ってから利用することが大切です。
閑話休題。4nec2 の使い方も思い出し、無事にアンテナ構造を入力できました。周囲の構造物を正確にモデリングするのは困難なので、自由空間でのシミュレーションで妥協しました。(私の環境は団地のベランダなので、地上高や地表の導電率などを正確に入力しても、エレメント長の設計に反映するのはたぶん無理。)
エレメント長や給電点についてもシミュレーションで(ある程度)最適化できたので、夏休みの工作に作ってみようと思います*4

*1:私のシミュレーションでも、自由空間上でフロントのメインローブで 4〜5dBi くらいしか得られなかった。

*2:あるいは CPU アーキテクチャにしても。

*3:ゲームのモノポリーが経済活動の側面を模倣しているからといって、世の中がモノポリーのように動く訳ではありませんし、将棋やチェスが戦争の模倣だからといって(以下略)。

*4:今年は、半強制的に 2週間の有給消化を示唆された。